労働条件の変更
労働条件の変更について、法律上問題となるのは条件を引き下げる場合で、典型的には、賃金を引き下げること(カット)ができるかという形で問題となります。
賃金の引き下げは労働条件の変更になりますので、会社と従業員の同意が必要です。
個々の従業員の同意を得ずに、会社が一方的に通告しただけで賃金カットをすることはできません。
(もっとも、会社が就業規則を変更する方法で賃金引き下げをした場合、事情によっては、賃金引き下げが認められることがあります。)
一方的な賃金カットを言われた場合など、労働条件が変更されて納得できない場合には、当事務所までご相談ください。
就業規則の変更
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業所では、作成・届出の義務があります。また、賃金・労働時間など重要な労働条件は就業規則に定めなければなりません。
労働者の労働条件を不利益に変更する(賃金引き下げなど)ためには、原則として使用者は労働者の同意を得る必要がありますが、例外的に、就業規則を変更することで労働条件を不利益に変更することが認められる場合があります。
過去の裁判例では、労働条件を不利益に変更する必要性があり、かつ合理性があると認められる場合には、使用者が労働条件を一方的に変更することが許されるという傾向にあるといえます。
合理性があるかどうかの判断については、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等の交渉の経緯、他の労働組合または他の従業員の対応、同種事項に関するわが国社会における一般的状況などを総合考慮して判断されます。
この判断は非常に難しい判断となりますので、就業規則の変更について、疑問をお持ちであったり、納得できない場合には、当事務所までご相談ください。
配転(部署移動、転勤)
配転とは配置転換の略で、職種の変更と勤務場所の変更の2つを指します。勤務場所の変更のうち、住居の変更を伴うものを転勤といいます。
多くの企業では、就業規則に、「会社は、業務の必要がある場合には、社員に異動(転勤、配置換え)を命じることができる。」という規定を置いているため、職種や勤務場所が限定されているような例外的な場合を除いて、配転は使用者の裁量が広く認められるといえます。
したがって、配転命令は原則として有効とされますが、例外的に、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的によりなされた場合、労働者に通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合などの特段の事情が認められる場合は、無効となる余地があります。
この点、育児介護休業法に、転勤命令により子の養育、家族の介護が困難となる場合は、これらに配慮しなければならないとの規定(配慮義務規定)が設けられたため、この場合には、従前よりも転勤命令が有効とされることが限定されるといえます。
配転命令を受けたが、親の介護ができなくなってしまう、子の養育に支障が生じる、業務上の必要がなく上司と合わなかったため転勤させられるのではないかなど、配転により著しい不利益を被ってしまう場合などの場合には、弁護士までご相談ください。
出向
出向とは、出向元の企業が雇用する労働者を出向先の企業において、一定の期間、出向先企業の指揮命令のもとに労務を提供させるものをいいます。本社勤務の社員を一定期間、子会社で働かせる場合が出向の典型的なケースです。この場合、一定の期間が経過した後は本社に戻ることが前提とされています。
出向元企業が出向命令を発するためには、労働者の同意が必要ですが、多くの企業では、就業規則に「出向することがある」という内容の規定を置いているため、労働者が入社したことにより包括的に同意しているものとされ、原則として出向は認められます。
もっとも、出向によって労働者が著しい不利益を受ける場合には、例外的に人事権の濫用として出向命令が無効となる場合もありますので、そのような場合には当事務所までご相談ください。